日本刀の鎬:刀身をさらに強靭に、そして鋭利にするためのかたち
2021/11/15
日本刀は前述のように、「斬る」ことに赴きを置いています。したがっていかに刃を鋭くして切れ味をよくするかが最大の課題となりますが、切れ味をよくするにはどうしても刃を薄くしなければならないのですが、これは逆に刃が欠けやすく折れたりする原因にもなります。そこで昔の刀工がたどり着いたのが、刃先から次第に厚みを増やしていくという方法が発案されるのですが、むやみに厚くしてしまうと今度は重量が増えて使いづらくなってしまいます。そんななかこの厚みをどこまで広げてどこまで厚くするというようなことを繰り広げるうちに「鎬」という形状が生み出されました。この鎬も日本刀らしい特徴のひとつであり、また日本刀の美しさを強調する大事な部分でもあります。
1.鎬地の広さ
この鎬は一般的には刀身の最も肉厚になっている線、つまり「鎬筋」のことを言いますが、この筋より棟側を鎬地、刃側を平地と呼びます。鎬地の幅は、時代や流派などによって特徴が顕著に現れるもので、鎬筋と棟までの幅が広い場合を「鎬地が広い」と表現します。鎬地が広い刀身は平安時代初期の刀剣に多かったのですが、時代とともに見なくなっていきました。反対にこの間隔があまり広くとっていない場合を「鎬地が狭い」といい、刃の部分が広くなるため軽量で切れ味の鋭い仕上がりになります。
2.鎬地の高さ
鎬筋は鎬地と平地の境界で、ここが厚くなると「鎬筋が高い」と表現し、必然的に刀身は重くなり頑丈な刀剣になります。反対に「鎬筋が低い」ものは重量も軽く刃も鋭くなりすっきりとした姿になります。寛文新刀と呼ばれた時期に多い特徴です。
3.平肉の厚み
刃側の部分は平地と呼びますが、ここが肉厚な場合を「平肉つく」といい刃こぼれがしにくい刀剣になります。大鎧といった堅いものを断ち切る必要性があった鎌倉時代の太刀に多い特徴です。反対にこの部分が薄い場合を「平肉枯れる」といい、鉄砲が普及しだした時代から見られる特徴で、平和な江戸時代になってからは特に平肉枯れる傾向が強くなっています。