日本刀の柄:良し悪しはここを見るべし
2021/11/10
目次
1.柄糸はしっかりと巻かれていること
正しく巻かれた柄糸は、しっかりと締まっていて簡単には動かない
巻き方が悪いと柄糸はすぐに緩んでしまい、少しの力でも動いてしてしまいます
柄には柄糸(組紐または革紐)が巻かれています。手で触って崩れるような物は選ばないようにしましょう。最悪の場合事故につながる恐れがあります。柄糸がしっかりと巻かれている物が本来の姿です。
2.縁頭と糸の段差がないこと
縁頭と柄糸との段差が極端な物は非常に不格好で見られたものではありません。使用にも影響が出ますので避けましょう。金具と柄糸に段差がある柄はしっかりと巻かれていない場合が多いです。
上手な柄巻は、糸と縁金や柄頭に対して同じ高さで巻かれています。
下手な柄巻は、糸と縁金や柄頭に段差が生じています。
3.表裏の向きや順番が間違っていないこと
刀には差し表と差し裏があり、必ず差し表の一文字から始まるという決まりがあります。柳生拵などの特殊な柄でない限り、必ず差し表に一文字がきます。留めも同様で、差し表は表留、差し裏は裏留で終わるのが決まりです。留めが反対になっている柄は、柄巻の知識を十分に理解していない場合も考えられます。
正しく巻かれた柄は、差し表に表留の結び目になります。
差し裏は、当然裏留の結びで締めます。表と裏では結び方が明確に違いますのでご注意ください。
4.菱が揃っていること
鮫革に柄糸を巻いて菱が出来ます。この菱が揃っているのもしっかりと巻かれた柄の条件の一つです。菱が崩れてしまっている物は見た目も不格好で、使用にもやはり影響します。このあたりも注意して見るようにしましょう。
正しく巻かれた柄は、柄巻全体に均一に菱形が並んでいます。
これも菱形が均一に並んでいて一見綺麗に巻かれていますが、根本的な問題は差し表にも関わらず裏留めになっていることです。
これは悪い例の柄巻きです。菱形が崩れていて均一ではありません。また目釘を完全に覆ってしまっています。
5.上糸と下糸が交互になっていない物は避ける
柄糸は上糸と下糸を交互に巻いていくのですが、交互になっておらず、全ての上糸が同一方向になっている物は間違った柄の巻き方です。本来の姿と比較してみてください。上糸と下糸を交互に巻く理由は、敵の刀を柄で受ける等して柄糸が途中で切れた場合でも簡単に解けないようにするための先人の工夫です。全てが同一方向に巻かれている物は、途中で切れた時に簡単に解けてしまいます。
正しく巻かれた柄は、柄糸が菱の交差を交互に巻いていきます。
一回の折り返しで、上下の柄糸が交互に巻かれています。
この柄巻は、菱形が乱れているだけでなく上下交互に巻かれていないので、柄糸が切れたらすぐに解けてしまいます。
6.目貫の向きが間違っていないか
目貫の向きや天地、表裏が間違っていないか確認しましょう。目貫の天地が逆さになっているのは論外です。逃げ目貫になっている物も古来より避けられています。目貫の種類は非常に多く、一概には言えない場合もありますが、一般的な目貫の場合、
動物 顔(体)が縁金を向く
植物 根が縁金を向く
と言うのが一般的な目貫の掟です。逆になっている物を逃げ目貫と呼び、武士はこれを嫌いました。目貫によっては当てはまらない場合もあります。
これは夫婦鳥の目貫で、上が表、下が裏です。
上が表、下が裏の虎目貫です。表の虎の頭は逆向きですが、胴体の向きは表です。
この目貫はナマズの頭が縁金に向くのが正解です。
差し裏側もナマズの頭は縁金を向いています。
この柄巻は、竜の目貫の天地が逆になっていて、竜の背中が刀の刃側を向いている上に逆向きになっています。つまり差し裏につけるべき目貫が、差し表につけられています。
この竜の天地は正しく装着されていますが、この目貫は元来差し表用です。