秘技・燕返し
2021/11/01
1.燕返しとは
燕返しという技は、刀を相手の真っ向から垂直に地面スレスレまで斬り降ろします。地面まで斬り降ろすのは、要するにフェイントの意味を持ちます。目の前にいる相手がカラ振りしたと思わせた後、その瞬間に地面スレスレにある刀の刃を上部に返して、相手の股から顎まで斬り上げるのです。下からの攻撃は、誰にとっても分かりにくいものです。結果として燕返しは、この下からの攻撃で相手を打ち負かす技です。これは古流剣術の中条流に伝わる「虎切刀」と呼ばれる技法であり、相手を打ち負かすために編み出された実戦の技で、普段はあまり目にすることがない秘剣とされていました。
2.燕返しと言えば
その燕返しを世に知らしめたのは、剣豪の佐々木小次郎と言われています。小次郎もこの中条流を学んだと言われており、実はこの燕返しというのは後世に作られた名称で、小次郎自身が燕返しと呼んでいたかどうかはわからないと言えます。ちなみに中条流は、中条長秀が中条家家伝の刀法と念流を合わせ自己の工夫を加えて創始したもので、室町期の京で創始されたことや、師である念阿弥慈恩が鞍馬山で修行した事などから、京八流の流れを汲む剣術とも言われています。後の一刀流、冨田流、戸田流等、多くの有名流派の母体となったことでも知られています。
3.特徴
下からの攻撃といえば、他のスポーツにもよく見られ、有名なのがボクシングのアッパーカットです。ボクシングのアッパーカットは人体の構造上、下から上への攻撃は大きなダメージを与えやすいうえに、いくら動体視力が良くても完全防御は難しいでしょう。