『範士が語る』渡並 直 範士 第1部

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『範士が語る』渡並 直 範士 第1部

八段合格への道標

「しっかりとした打突で思い切って打ち切った技が出れば私なら〇(マル)をつける」


高段位の審査時間は六段審査が1分、七段審査が1分30秒、八段審査が2分と定められている。このわずかな審査時間の中で相手に一本でも有効打突を打たれてしまうと、主導権を握られ挽回するのは困難である。そんな不安からよほどの自信がないと思いきって打ち込むには勇気がいる。
渡並範士は、「ここで打ってくれたらいいな」と思う瞬間に、技を打ってくれると評価をするという。さらに「打突が有効打突でなくても、しっかりとした打突動作で気の入った、思い切って打ち切った打突なら〇(マル)をするだろう」と語る。審査員は好機の思い切った打突を待っている。そして、そういった打突は感動を覚えさせ、審査員の心を打つことができると語る。
受審者の心理として、うまく有効打突を打ちたい、打たれたくない、という気持ちがある。しかし、うまく相手をかわして有効打突を打っただけでは、それは審査員の心を打つことはできない。有効打突にこだわり過ぎず、自身が「ここだと」という機会を学び打ち込んでいく勇気が必要である。そのためには普段の稽古で何度も失敗を繰り返し、自信をつけるしかない。
 

 


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