若武者たち 國友 錬太郎

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國友鍊太朗(福岡県警)地に足のついた強さの根源

令和元年の全日本選手権で初優勝を果たした國友鍊太朗選手(福岡県警)。

優勝以外にも過去2位2回という類まれな試合での勝負強さはもちろんだが、冷静な試合運びや、手元を崩さず無駄打ちの少ない面中心の剣風に対する評価も高い。

その地に足のついた強さはどうやって培われたのか、どんな日々の稽古から生まれるのか、福岡県警察第一機動隊を訪ねた。

※本インタビューのフルバージョンは、本サイト内の動画「若武者たち──國友鍊太朗」で公開しています。

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記 GEN編集部 S

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1.國友 鍊太朗の歩んだ道

 

 

動画はこちら→ https://gen-universe.com/ja/video/495

 

 

國友選手は小学校1年生のとき、今宿少年剣道部で剣道を始めた。

「きっかけは父母が剣道をしていたこともあり、一回見学に行ったらすごく楽しそうだったので始めました」

 山内正幸教士八段が指導する今宿少年剣道部は福岡市西区にあり、國友選手の実家から近かった。現在八段である父秀三さんは今宿少年剣道部のOBであり、國友少年が剣道を始めるのは自然な流れだった。常に全国トップレベルの戦績を残している道場だが、稽古は楽しかったと國友選手は言う。

「切り返しかかり稽古が最初の30分ぐらいあり、基本を徹底してやって、そのあとに技の研究、技の稽古を長い時間行ないます。稽古で毎日違うことを先生が教えてくれるので、その技の稽古を楽しみにしていました」

 そして、小さいときから負けず嫌いで、ただ負けたくない一心で稽古していたと振り返る。地元の各大会で結果を残し、小学5年生のときに日本武道館で行なわれる全日本剣道道場連盟主催の全日本選抜少年個人錬成大会(現・全日本道場少年大会)に出場した。

「ベスト8に進んだのですが、村上雷多さん(現大阪体育大学教員)に負けて、全国にはこんな強い人がいるんだ、と衝撃を受けました」

 中学・高校は父秀三さんが監督を務める福岡舞鶴に進む。父に言われたからではなく、今宿の同級生が舞鶴に行きたいと言い出して、その仲間たちと一緒にやりたいと思ったからだという。中学時代は全国中学校大会に2年連続で出場し3年のときにベスト16まで進出、今宿少年剣道部として全日本少年錬成大会(現・全国道場少年大会)で3位に入賞している(今宿少年剣道部の2チームが3位)。

 父の指導は基本を大切にし、「手元を上げるな」と当時からよく言われていたそうだ。

「すごく基本を重視した稽古でした。もちろん練習試合とか練成会も行っていましたが、基本ありきの指導でした。父は家ではお父さんで、普通の親子の関係でしたが、家を出ると先生と呼んでいました。父も家と学校の区別はしてくれていたので、私もすんなりとできました。父の仕事に対する姿勢とか剣道に対する取り組み、私たちの指導に対する熱意はすごく尊敬しています」

 高校2年生のときには玉竜旗大会で同校初となる3位、翌年はさらに一歩前進し2位の戦績を残し、国士舘大学に進んだ。

「(高校3年のとき)国士舘大学の4年生に畠中(宏輔・現警視庁)先輩とかがいて全日本学生で優勝されたのですが、その姿に憧れ、自分も国士舘に行ってああいう正しくて強い剣道がしたいなと思いました」

 自身は大学4年生のときに全日本・関東の学生優勝大会(団体戦)で頂点に立つが、この年代はそうそうたる剣士が築いてきた国士舘大学の歴史上でも特筆される最強メンバーだった。ともに全日本学生個人を制した安藤翔選手、藤岡弘径選手をはじめ、同大会個人3位や、1学年下に関東個人2位、3位といった選手が揃い、関東個人ベスト8の國友選手の戦績が目立たないほどだった。

「先生方ももちろんですけど、いろんな仲間とか先輩後輩に出会えたことが一番大きい宝じゃないかなと思いますね。(卒業後の2018年に)安藤選手が世界大会の個人団体で優勝したときも、私は帯同していて見させていただいて、喜び半分、悔しさ半分というような感じで、もっと自分も頑張ろうと思いました。そのほかの同級生も各県で頑張っているので、もちろんすごく刺激になります。」

2.國友 錬太郎の構えと、実戦に活きる素振り

 

 

動画はこちら→ https://gen-universe.com/ja/video/495

 

 

福岡県警察に入って8年目を迎えている。第一機動隊に所属し、警戒勤務などの職務をこなしながら稽古を積んできた。國友選手は日々どんな稽古をしているのか、そのごく一部を披露してもらい、動画にも収めた。とくに素振りと構えについて、詳しく聞いた。

 素振りについては、こんなふうに話している。

「特別な素振りをしているわけではありません。正しく素早くということに気をつけながら、ただし教わってきたことに加えて、自分なりに工夫しながらやっています。また、素振りを素振りとしてとらえるのではなく、準備運動としてとらえるのでもなく、必ず実戦に活きてくるということを意識しながら取り組んでいます」

 具体的にどんな点に注意を払っているのだろうか。三種類の素振りを実際にしてもらいながら話を聞いた。

 まず「前進後退正面素振り」。

「私は肩とか腕に力が入る癖があるので、臍下丹田に意識を置いて、下半身で振るように意識しています。上半身ももちろんまったく力を抜くのは無理ですが、基本的に下半身に意識を置きながら、上半身も力を入れない程度に早く振るという意識です。(前進後退は)なるべく大きく動くように心がけているのですが、頭や腰の位置が上下することなく水平に動けるように気をつけています」

 続いて「前進後退左右面素振り」。

「正面素振りと意識することは一緒なのですが、それに加え左右に振るので刃筋や角度を意識しながら行なっています。自分では分かりづらいので、鏡を見て確認しながら行なうといいと思います。左右面の手の作用は試合の中で返し技を打つときなどに必ず使うので、実戦にも活きてくるということを意識しています」

 三つ目は「跳躍素振り(早素振り)」である。

「早く振ろうとするとどうしても肩に力が入ってしまって、剣先が落ちなくなります。顎の下まで切るようなイメージで、早くなってもしっかりと剣先を落とすようにします。肩に力を入れず下半身で振るイメージがより大切です」

 次に構えについて。端正な構えは國友選手の大きな長所であり、多くの剣士のお手本になるものといえるだろう。構えたときの姿勢だけでなく、動きの中でも背筋がスッと伸びた構えが崩れることが少ない。だから隙がない。

 どんな意識で構えを作り、動いているのだろうか。

「まず臍下丹田に意識を置くようにしています。しかし力を入れすぎると堅くなってしまうので、入れすぎず、ゆるめすぎずに、意識を置くようにしています。反りすぎず、(前に)倒れすぎず、まっすぐな姿勢を意識しています。握りは一つの指が浮いたりしないよう五指すべてで柄を握るのですが、その中で小指、薬指、中指を中心にして持つ、という意識で保持しています」

 足幅、重心については非常に繊細な感覚を持って意識し、工夫している。それが文字通り地に足のついた、あの崩れない剣道につながっているのだろう。

「足幅は基本的に歩幅になるよう意識しています。前に出てもいつでも跳べる体勢、後ろに下がってもいつでも跳べる体勢を意識しながら、どんな状況でも相手の動きに対応できるように、なるべく歩幅を変えずに圧力をかけるようにしています。重心は基本的には左右5:5になるようにして、足を継がないで打突するときは、5:5の重心から、右足に6、左足に4に移動するぐらいに意識して蹴り出し、踏み込むように心がけています。そして調子が悪かったり、うまくいかないときは、この重心を少し変えてみたり、歩幅も変えてみたりといろいろ試してみて、工夫するようにしています」

3.國友 錬太郎の現在地

 

 

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2020年はコロナ禍の中、他の多くの剣士たちと同じように、國友選手も稽古や試合のできない日々が続いた。そんな中で改めて思ったことがあるという。

「剣道ができなくなって改めて、これまで普通にできる環境を作っていただいていたんだなと気づきました。現場で活躍されている警察官がいる中で、自分らは毎日稽古をさせてもらっている環境にあった。こんなことになるとは想像していなかったので、改めてそのことをすごく考えさせられましたし、剣道ができることにしみじみと感謝しました」

 これだけの実績を残しながら、國友選手はまだ世界選手権大会のメンバーに選ばれていない。日本剣道の良さを体現する存在として世界にアピールするという意味でも、世界の舞台で國友選手を見てみたいという人は多いだろう。本人もきっぱりと目標を語った。

「(今後の目標は)もちろん、まず全日本選手権で2連覇。そして世界大会に出場して、優勝したいです」

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